S:涼宮ハルヒを横に置いて     …古泉×キョンMainです
O:おおいにキョンとSOS団員を愛でる …実はキョン総受?
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〜『涼宮ハルヒの憂鬱』の女性向け(801)+萌えBlog@fm5★〜
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    9月10日は長門記念日(その2)
    仕事関係でテンパってました。
    どうもウチの長門さんは素直でないです。しかも、(その3)に続きます。
    (自分的には素直クールになってほしいのに、ツンデレのツン9割ぽいのね)

    ★9月10日は長門記念日の限定設定
     ・キョン×長門で友達以上・恋人未満
     ・キョンはメガネ・ポニテ属性無し
     ・キョンはノーマル(801属性無し)
     ・ハルヒとキョンは主従関係があるだけ<ぉぃ!  →(その1)

    キョン×長門(一般の方々も大丈夫)=801要素0%
    ↓(その2)は9月10日の出来事です。

    9月10日は長門記念日(その2)


     さて、お昼を回った。
     午前中は、色々段取りを考えた。
     それはもう、恥ずかしい妄想に取り憑かれたり、いざって時に台詞トチってしまう場面も頭に浮かんだ。そりゃーもう青春真っ盛りって感じのバカバカしい想いに囚われまくったさ。
     考えまくったあげく…体力気力を使い果たしたように脱力してしまったりで、困ったもんだ。

     結局の所、目の前に鎮座した昨日の戦利品をどう言って長門に渡せば良いのかって議題で脳内討議が絶賛紛糾中たったりする。

     ミニアルバムにペアのマグカップに夫婦茶碗…そしてサファイヤリング?

     まず、無難に済ますなら…ミニアルバムだろう。
     あまりに殺風景な部屋が気になって長門に写真立てをプレゼントしたのは、夏前のことだったし…、夏休みの写真が山ほどあるから、その中から良く撮れているの(もちろん、俺と長門が同一フレームにおさまっているもの)をチョイスしてアルバムに入れていく。
     こうして見ると長門の無表情無感動ぶりも徐々に(ほんの僅かな差だが)緩んできているように思う。
     感情を普通に持って表情に出すことが、長門にとって良いのか悪いのか…俺には解らないが、俺自身としては表情を(俺だけに)見せてくれることが兎に角嬉しい。
     長門自身が自分の変化に気付いているのだろうか…。

     そんなことを考えながら、プレゼントらしく包んでみた。
     包み紙は夏休みの和訳の宿題で使った英字新聞。
     これが、日本語の新聞だと親父の弁当みたいになっちゃうけど、不思議かなアルファベットの魔力ってやつか? 割と見栄え良く包めて俺的には大満足。
     ついでに、ペアのマグカップも包んでみた。
     そう言えば長門のマンションは日本茶かほうじ茶をだったよな。
     長門は珈琲を飲む習慣がないのかな?
     SOS団の集まりでも飲むのは紅茶系かジュースのたぐいだったような気がする。

     このマグカップで長門と一緒にモーニングコーヒーを・・・
     (おぃっ、ナニ考えている俺〜〜っ!)
     ひとり突っ込みをしてジタバタしてる自分はきっと変な人に見えただろう。
     なんか勢いついでに夫婦茶碗まで包みそうになったが、それは行き過ぎだ。

     止まれ自分っ!

     夫婦茶碗は次のイベントでいいだろう?
     って、クリスマスには似合わないかなぁ…。

     あぁ〜、でも長門っていつもコンビニ弁当かレトルトカレーってイメージだよなぁ。料理とか作ったりするのかなぁ?
     う〜ん、想像出来ん。
     焼き魚を焼く長門とか、味噌汁の味見をする長門とか…、
     いや、見てみたい気もする…。
     熱烈に…マジに見てみたいが、効率を重視するヒューマノイド・インターフェースである長門が料理をするという行為を無駄と考えているような節もあるから、現時点では無理かもしれない。

     やっぱりクリスマスには、こっちの指輪の方が良いよなぁ…。
     ちょっとケースを開けて中を見る。
     想像以上に大きめの石が煌めいている。
     碧い石。
     長門の色。
     初めて会った時から、彼女のイメージカラーは碧だなぁ。
     青でも蒼でもなく、碧。

     ただ、この指輪を指にしている長門も想像できないが…な。

     マジマジと指輪を見て考え込む。
     こいつは流石に早すぎるだろうなぁ。
     これから告白して…OKもらって…クリスマスかホワイトデーあたりだよなぁ。

     頭の中の予定表は未定表だ。
     にもかかわらず、事細かな予定を脳内で作り上げている。
     マズイ状況だなぁ。

     ただ、その碧い石は、男の俺が見ても綺麗な色で輝いていて見えて、そのまま置いていくには忍びない。
     ついでだっ、こいつも包んでいこう。
     長門に選んでもらえばいい、全部同じ包みで大きさが違うプレゼント。
     どれを選ぶかは長門次第だな。

     さて、そろそろ良い時間だな。
     覚悟を決めて、包んだプレゼントを紙袋に入れた。
     長門がどれを選ぶのか…ちょっと楽しみな気がする。

     もう秋の気配のする空。
     薄い青色の空に、筆でなぞったように白い雲が流れている。
     駅の側にある可愛らしいケーキ屋に寄った。
     らしくないなと思いながらも、ケーキをひとつ買ってみた。
     小さめの2〜3人で切り分ければ丁度良いくらいのチョコレートケーキ。
    「何かメッセージでも描きますか?」
     と、問われて途方に暮れた。
     まさか『Happy Birthday!』なんて訳にはいかない…。
     硬直した俺の表情から察したのか、にっこり笑顔を浮かべたお姉さんは、ロウソクとストロベリーチョコレートのデコレーションチューブを付けてくれた。
    「これでね、文字が描けるからね。」
     小さな声で頑張ってねと囁かれて、背中を押されるように店を出た。

     歩く速度を調節して、ウマイ具合に時間通りに長門のマンションに到着した。
     押し慣れた部屋番号を押す。
    「………」
     相変わらずの無言の応答。
    「…俺だ」
    「…入って」
     声に感情が見えづらいのが難点だが、長門なりにほんの少し嬉しげな音が含まれていると思う。いや、思いたいのかもしれない。

     ピンポーン。
     いつも以上にバクバクする心臓を抱えたまま、インターホンを鳴らす。
     すっと、音もなくドアが開かれる。
    「よっ…こんちわ」
     あ、失敗した。
     もっとマシな台詞が有ったろうに…。

     目線で促されるように、靴を脱いで部屋に上がる。
     俺が来る時間に合わせて用意していたんだろう…コタツ布団の無いコタツ机にティーポットが置かれている。
    「あと…2分」
     カウントは長門自身の体内時計だろうけど…その2分が有ればケーキのデコレーションも出来るかな。

    「あ、ケーキ買ってきたんだ…喰うだろ」
    「…ん」
     小さく頷くだけの動作。
    「あ、準備して良いか?」
     キッチンを指さして確認する。
    「お客さん…」
     小さく嫌々するように首を振る。
    「ダメか?」
     ほんの少し首を傾げて考え込むような仕草。
    「見ちゃイケナイものでもあるのか?」
     小さな否定。
    「すぐだから、待ってな…」
     ケーキの箱を開けて、オマケしてもらったチョコチューブで文字を描き込む。
     『9月10日は長門記念日』
     ちょっとばかし恥ずかしいが、これ以上の言葉は俺の一般人並みの脳味噌から発想できなかった。
     ローソクは3本か?
     朝倉が言うには生まれて3年あまりって言っていたから。

     食器棚から適当なサイズの更にケーキをのせて、ついでに俺用の小皿を片手に持って、そのままリビングへと戻る。
     ティーカップに紅茶を注ぎ終わるジャストタイミングだった。
    「…長門記念日?」
     目の前のケーキよりも、そこに描かれた文字が気になったらしい。
     ま、そりゃそうだろう。

    「あ、あのな…俺の中で9月10日は長門記念日にしたかったんだ」
    「記念日?」

     脳内の段取り通り進まなくて、ガタガタになっている。
    「そう…ちょっと俺の話を聞いてくれるか?」
    「…紅茶、冷める」
     さあ言うぞと、腹を決めた瞬間に外されてしまう。

    「あぁ、そうだな」
    「ケーキは?」
     長門なら丸ごとでも喰い切れる大きさだ。
     マッチもライターも見当たらなかったのでロウソクには火を付けていない。
    「全部食べれるなら、いいぞ」
     少し迷うように瞳が揺れた。
     伺うような上目遣い?
    「あ〜、ちょっとだけ欲しいかな?」
     指でこの位と示した大きさを、長門はキッチリ切り分けて俺の前に置いてくれた。

     紅茶を一口飲んだ長門は、残り80%ほどの大きさのチョコレートケーキを前に考え込んでいた。
     どうやらロウソクが気になるようだ。
    「あ、刺さっているロウソクは食べれないからな」
    「食べれない飾り?」
    「歳の数だけ刺して火を灯すんだ。長門って生まれてから3年って聞いたから」
    「そう…3年。…火?」
     指先をロウソクの先端にかざして小さく口元が動いた。
     ポワッとロウソクに火がついた。
    「人間は生まれた日を記念して、歳の数だけロウソクを灯して吹き消して祝うんだ」
     揺れる炎を見て小首を傾げている。
    「…吹き消す?」
     あ〜、火をつけたのに吹き消すのは合理的でないってことを言いたいのか?
     灯された火がロウをジワジワと溶かしている。
    「放っておくとロウがケーキに垂れるからな、その前にお祝いの気持ちを込めて吹き消すんだ」
     説明しても、きょとんとした表情のままロウソクの火を見詰めている長門。

    「Happy Birthday to you……♪」
     俺は世界で1番多く歌われているであろう有名なお誕生日ソングを歌っていた。
     ひとりで歌うって情景はちょっと寒かったけどな。
    「Happy Birthday dear Nagato〜 Happy Birthday to you. ほらほら吹き消して、」
     拍手をして長門を促すと、おずおずとした動きで揺れる火を吹き消した。
     まだ、よく解っていないような表情をしている。

     ケーキを買ったときには、『Happy Birthday!』なんて訳にはいかない…なんて考えていたけど、結局はそこに逃げた自分。
     だってなぁ…勝手に決めた俺的な記念日だけど、そいつの名目なんて…やっぱり思いつけない。

    「長門のお祝いなんだから、遠慮しないで食べろよ」
     火が消えたロウソクを抜き取って、固まっている長門の手にフォークを持たせた。
    「…お祝い? よく解らない」
     あ、そうか…そうかもしれない。
     俺ひとりが調子に乗ってるって状況なんだろうなぁ。
     …すまん。

     黙々とチョコレートケーキを切り崩して口に運ぶ。
     見事なまでの規則的な動作。
     そんな長門の様子を横目で見ながら、自分の皿のケーキを少しずつ口に運ぶ。

    「なぁ、長門?」
     長門が半分ほどケーキを食してから俺は言葉を掛けた。
    「…なに?」
    「長門が好きなものってなんだ?」
    「…すき? もの? 定義が漠然として不明確」
    「あ、そうか? だったら…食べ物の中では?」
    「…特に…無い」
     端的に答えた長門は、視線を下に落とす。
     チョコレートケーキは徐々にその形を小さくしていく。
    「ケーキは何が好き?」
    「…食べたのはこれが3回目。どれも甘くて美味しいと思う。」
    「あぁ〜、それなら読んでる小説の中で1番好きな本は?」
     多少考えるように目を伏せた長門。
    「それぞれ興味深い…だから比較は難しい」
     興味深いという感想は有るみたいだけど、好きという範疇に存在するものが無いような様子だ。

     おい、ちょっと待て…長門の中には『好き』という概念は無いのか?
     それ以前に、感情という枠組みは無いのだろうか?
     『好き』という感情を…どう言ったら長門に解るように説明できるのだろうか?
     逆に、その解らない感情を押しつけられたら、長門も困ってしまうだろう。

     だが、そこまで推測していたにもかかわらず、俺は直接的な質問をしてしまった。
    「あ”〜だったら、好きな人は?」
    「…人?」
    「そう、人」
     ガラス玉のような…作り物のような瞳が大きく瞬く。
     硬直したまま言葉を失う長門。

    「すまん、長門…いきなり変なこと言って。困ってるだろう?」
     直接的すぎた。
    「…困る?」
    「長門…言葉を探してるだろ? ごめんな、」

    「あなたが謝る必要はない。確かに…私は言葉を探している。これは私の中の問題。データベースの中に適切な言葉が見つからない。この場合に使うべき会話パターンを私はまだ獲得していない」
    「会話パターン?」
     長門の瞳に真摯な色が浮かぶ。
    「まだ、この地上に降りてからそのような問い掛けを受けたことがない。あなたの言う『好き』という言葉がどの程度の意味合いであるか。日本語の曖昧な部分が読み取れない…。だから答えるべき言葉を探せない。」

    「ごめん…な。俺が先にちゃんと言うべきだったな。俺自身の『好き』の意味合いを…」
     まっすぐと俺を見詰める瞳が大きく瞬いた。
     その頬にそおっと手をあてて見詰め返す。
    「あなたの…『好き』?」
    「そう、俺は長門のことが好きだ。この『好き』は、友達や家族を思うよりもずっとずっと大事な人に対する『好き』って気持ちだ。」

    「長門…解る?」
    「『好き』という…概念についてなら」
     『好き』の意味については理解しているようなのに、表情が全く動いてくれないので不安になる。

    「…理解できないのか?」
    「私は…あなたの感情を受け取る立場に無い」
     ぽつりと小さく言葉が落ちた。
    「ちょっとまて、長門っ…その立場ってなんだ?」

    「私は…涼宮ハルヒとその周辺を観測するために地上に存在する…ヒューマノイド・インターフェース。ふつうの人間とは違う」
    「そんなことは知っている。それを含めて…俺はっ、」
     そこまで言って…俺は気付いた。
     フォークを持つ長門の右手が小刻みに震えていることを。

    「すまん、ビックリしたのか? 長門が嫌なら…もう…」
     見上げてくる瞳が濡れたように潤んでいる。
     左手で俺のシャツの袖をそっと掴んだ長門。
     言いたくても言えないのか…言葉が見つからないのか…俺には解らない。
     だけど、目の前の長門は、今までに無いくらい儚く…消えてしまいそうに見えた。

    「あなたのことを…『あなたの言う好き』と思っている人を私は複数知っている。少なくとも…彼女らと彼らは私よりあなたにふさわしい」
     ちょっとまて、長門…その彼らってなんだよっ!
     しかも、複数形ってのはどういうことだ?
     それと…彼女らって、そんなに俺は女子に人気があるとは思えんが?

    「それはあなたが気付いてないだけ、あなたは多くの人に好かれている」
    「待ってくれ長門…男は論外だっ!」
     ちょっと泣きそうな自分が居た。
     だって自分よりもふさわしい人って、なんだ長門…?
    「文献やデータによると、全人類の10%は同性愛者・・・」
    「長門、それの10%には俺が当てはまらない…だから除外してくれ」
    「しかし…彼らも彼ならなりに…本気だと・・・」
    「だぁ〜〜、それはファンタジーの中でならOKだけどな、リアルでなんてシャレにならん。問題外だ」
     あぁ、良くワカンナイが長門のセンサーに引っかかった奴らの人数や気持ちの重さなど知りたくもない。知ったら知ったで後がコワイ。

    「…では、彼女らなら問題ない」
    「ちょっと待てっ! それとこれとは別だって、俺が長門を好きなの、他は関係無いっ!」
     なぁ、解ってくれよ…長門。

    「ただ…涼宮ハルヒの意向を私は無視できない」
     なんだよ、そのハルヒの意向ってのは?
    「…閉鎖空間…世界の再構築…」
    「関係無いってそんなもの! いくらハルヒがトンデモパワーを持っていたとしても、俺自身の感情をネジ曲げるなんてマネは出来ないし、俺がさせないっ!」

     思わず両手でその細い肩を掴んでいた。
     長門の右手からフォークが離れる。

     カランッ…
     皿に落下した音が、殺風景なリビングに響いた。


    ごめんなさい…(その3)に続きます。


    制作期間2006/09/11〜18 (長門…素直になってちょうだいな)
    | nayu | 長門_SS | 20:22 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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